Vol.02

博報堂DYアイ・オーで活躍するヒトビト 藤田 裕樹

発達障害である私の特性を活かしながら、可能性を広げています

今回は、発達障害がある社員の藤田裕樹にインタビューしました。藤田は東京大学を卒業し、大学院在学中に発達障害(アスペルガー)の診断を受けました。大学院中退後、支援機関での就労支援などを経て入社。現在、経営管理課にて人事労務関連を担当しています。
これまでの経緯から当社で働くことへの想い、特性を活かした働き方やチャレンジについてお伝えします。

01 自分の障害がわかり、モヤモヤしていたものが晴れた

インタビューを受ける藤田裕樹の写真1

「博報堂DYアイ・オー」に入社して約4年半、発達障害である私の特性を活かしながら働いています。やりがいを持って業務を遂行できて、入社してほんとうによかったと思う毎日です。

発達障害がわかったのは東京大学を卒業後、大学院で応用化学を専攻し、触媒について研究していた頃でした。私の障害の特性のひとつなのですが、両手を使いながら作業をすると手際が悪く、研究がなかなか進まないことが多かったのです。そのうえ教授や先輩に相談することもうまくできず、研究室に通えなくなって休学することに。病院に行き、発達障害、アスペルガーという診断を受けました。

診断を受けたときには、それまでモヤモヤしていたことの筋道が通ったようにすっきりした気持ちになったことを覚えています。それからは自分の障害特性について、どう向き合うか考えるようになりました。

02 特性を活かしたいという想いで「博報堂DYアイ・オー」へ

インタビューを受ける藤田裕樹の写真2

発達障害といってもそれぞれ異なり、アスペルガーは得意・不得意がはっきりしているのが特徴です。私の場合、数字や文章を細かくチェックすること、複雑で多量のデータを処理することなどが得意で、繰り返し同じ作業をすることも苦に感じません。その一方で、場の雰囲気や相手が何を感じているのかを察知すること、言葉の裏表や行間を読み取ること、物事をイチから創り出すことなどが苦手です。情報の取捨選択や集中のコントロールもうまくできません。

自分の特性について考慮した結果、大学院を退学。診療所での生活支援訓練や東京都第三セクター企業での障害者委託訓練を経て、発達障害に特化した支援機関にて就労移行支援のプログラムを受け、自分の障害特性と活かし方について理解を深めることができました。そして2014年9月、ここ「博報堂DYアイ・オー」にて約2週間の職場体験実習を行うことになったのです。この体験から、業務に自分の特性を活かせるのではないかという実感が得られ、さまざまな障害のある社員が協働していることや多様性を大切にして配慮し合える雰囲気もわかり、この会社で働きたいと思うようになりました。

03 適切なフィードバックにより難しいことにも対処できるように

インタビューを受ける藤田裕樹の写真3

正式に面接を受けて2015年2月に入社。支援機関やソーシャルワーカーとの情報共有に加え、自身でも障害特性について説明し、業務内容も特性をふまえて決定されました。最初は媒体課に配属され、各メディアからの請求書と「博報堂DYグループ」各社の取引データの整合性をチェック、異なっている部分をグループの各担当者に確認・訂正し、メディアへの支払金額を確定させて支払処理を行う業務に就いていました。数字や多くのデータを扱うことは私の得意分野であり、特性を活かせているという実感がある一方で、社外の方の電話を取り次ぐことも多く、とっさの判断で受け答えすることが難しい面もありました。はじめのうちは先輩方のサポートを得て、定期的な振り返りによるフィードバックも受けながら対処し、次第にこなせるようになったと思います。

2017年4月、経営計画管理室の現部署へ異動になりました。上司や同僚に教えていただきながら新しい業務を覚え、できることの幅を広げています。

04 多岐にわたる業務に携わる中、さまざまなやりがいを見出して

オフィスで働く藤田裕樹の写真

経営管理課では、当初は経理の業務がメインだったのですが、慣れてくると「違う仕事もできるのでは」ということで、だんだんとさまざまな業務に携わるようになりました。今では、人事データベースの管理・更新、規程類のデータベース管理や改定・策定、勤怠データのチェック・修正・集計、契約社員・パート雇用者の情報管理や契約書作成・手続きなど多岐にわたっています。

人事面では労働基準法の調査やそれを踏まえた規程類のチェック、労務面では全社員の勤怠データからの要修正箇所のチェックなど、詳しく調べたりまとめたりすることに自分の特性やスキルが活かせていると思います。規程の改定・策定については法律をどう解釈して規程に反映させればいいのか難しいのですが、労働基準監督署や社会保険労務士の方にも相談や確認をしつつ、上司や役員と協議をして進めています。
難しいことにチームとして取り組めることにもやりがいを感じています。

まだまだ不得意なこともあり、優先順位の判断がうまくできないこと、要求水準以上を目指してこだわらなくてもよいことにもつい集中してしまうこともあるので、上司に確認をとりながら進めています。ただ苦手意識のあった創造性については規程の文面の作成などにより身についてきたと思います。また電話応対や勤怠システムの窓口担当としての経験を積み重ねるうちに瞬時の対応についても少しずつうまくできるようになってきました。得意なことに特化した業務だけでなく、不得意なことにもチャレンジしてスキルアップできるようサポートしてくれるのも、障害者の自立や働きがいを大切にするアイ・オーの良さだと思います。

05 効率アップを図る工夫を続け、大きく成長を評価された

インタビューを受ける藤田裕樹の写真4

異動を経て、今の部署で次々と新しい業務に携わっていく中で、自分の可能性の広がりを実感できました。多種多様な業務なので大変ですが、スムーズに進めるためにさまざまな工夫を行っています。たとえば勤怠システムについては、チェックが見落としなくできる独自のマニュアルを作り、同僚とも共有しています。勤怠データの集計や修正をしやすいテンプレートも作って提案し、早く作業ができるようになりました。

入社後、さまざまな業務や人との関わりを通して成長した実感があり、自信にもつながっています。法律の調査やそれを踏まえた規程類のチェック、規程類のデータベース作成を中心に評価をいただき、1年間で成長した社員に授与されるグローイングパーソン賞のひとりにも選ばれました。

これからは、担当業務における専門知識を深めること、現業務のマニュアル整備やフローの効率化を行い、担当者が不在でも部署内で対応できるよう知識の共有を目指しています。また部署内の他の担当者が不在のときに私も対応できるよう業務の幅を広げていきたい。そのためにも少しずつですが、ろう者の社員に教わって手話も覚えています。

昨年度は社内のダイバシティ・インクルージョン委員会にも参加。社員のみなさんそれぞれの障害や考え方を知って、この人はこんな障害だからと画一的に見るのではなく、「個を見る」ことの重要性を知りました。特に発達障害はほんとうに個人によって特性がさまざまです。そうしたことへの理解を深めながら、将来的には社会においても、自分と同じような障害のある方へのサポートができるようになりたいと考えています。

チームリーダーから見た「藤田さんの強みや魅力」

森田チーフの写真

経営計画管理室 経営管理課 チーフ 森田 環(取材当時)

藤田さんの強みはたくさんあるのですが、真面目で苦手なことでもあきらめず前向きに取り組むところが一番ですね。

新しい仕事はメモをとって確認しながら確実に理解し、覚えた仕事についてはとてもスピーディ。たとえば何かの法律の条文が変わったとしたら、会社の規程のここを変えなくてはいけないとすぐに判断してくれます。情報がたくさん頭に入っているので経営管理課の仕事はとても向いているのだと思いますし、チームとしても助かっています。

人柄もよく、いろいろな仕事を嫌な顔せずに引き受けてくれるので、ときどきキャパシティオーバーになってないかなと心配になることも。抱えている案件の中の優先順位を明確にするよう伝えています。