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シリーズ 博報堂DY アイ・オーの “ヒトビト”

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博報堂DYアイ・オーで働く人々の生のをお届けします!

槇岡綾世 全身画像

“セクシュアル・マイノリティである私。 自分らしくいられて、成長できる会社です。”

博報堂DY アイ・オーのヒトビトファイル

Vol.04槇岡綾世Ryosei Makioka

聴覚障害者(難聴者)/性別違和 2016年9月入社

業務3部 放送確認課 勤務

現在、私は放送確認課で働いています。テレビCMが放送された後、各テレビ局が発行する放送確認書と広告主が購入したCM枠が契約通りに放送されたかを確認・照合・修正する業務についています。

※性別違和 生まれ持った体の性と意識する心の性別に不一致、違和感を覚えること。

01セクシュアル・マイノリティとして

「博報堂DYアイ・オー」には障害のある社員が多く、私もその一人であり難聴者です。また私はLGBTと呼ばれるセクシュアル・マイノリティに属していて、そのうちのトランスジェンダー(心と体の性が一致しない人)です。LGBTはマイノリティとはいえ一言でくくれるものではなく、型にあてはまるものでもなく、あたりまえのことですが、さまざまな人がいます。
生まれたときの自分の性別は女性で、名前も女性らしいものでした。ですが、私は女性であることに心が違和感を覚えていました。今はホルモン療法により身体と心のバランスを整え、改名も認められ、男性として生活しています。ジェンダー・アイディンティティとしてはFtM(Female to Male ※)です。会社がそんな私をあたりまえに受け入れ、社員のみなさんが男性として関わってくださるので居心地よく働くことができています。

(※)FtM (Female to Male)自分の性を女性から男性へと移行したい人、または移行した人。

02他の子と違うのかな?と気づいて

自分の身体的な性別に違和感を覚え始めたのは小学生の頃です。思春期にさしかかってきた頃、同級生の女子が「〇〇くん、かっこいいね」などの会話で盛り上がっていても、自分には男の子への好意の感情が芽生えなくて。私は他の子とは違うのかもしれないとぼんやり気づき始めたのです。でも、そのことを誰にも言わない方がいいのかなと思っていました。
中学生の頃には、自分の性への違和感がはっきりしてきました。ずっと女の子として生活してきたのですが、ある日そんな自分がいやだと思い、制服のスカートを捨ててしまったのです。それからはズボンを履いて過ごしていました。
高校生のときに、インターネットでLGBTについて知りました。トランスジェンダー、性別違和といった言葉を知り、「私はこれなんだ!」とモヤモヤしていたものがすっきりしたことを覚えています。でも、自分では納得できても、まだ親にもまわりの人にも言えませんでした。

  • インタビューの様子:真剣な眼差しで答えている槇岡さん

03自分らしくいられる場所を探して

高校を出て商業系の専門学校に進み、卒業後は故郷の広島県で就職、アパレル企業に勤務して販売を担当していました。お客様の求めるものをご提案し、喜んでくださることでやりがいも感じていましたが、専門学校で学んだパソコンのスキルを生かした仕事に就きたかったこともあり、転職を考えました。
障害者向けの就職情報サイトを見ていて、「いい会社だな」と思ったのが「博報堂DYアイ・オー」です。ここで働きたいと思い、広島から上京し、ビジネススーツを着て面接に行きました。以前の職場では自分の性についてまわりの人に伝えることができなかったのですが、これからは自分らしく生きたいと思い、面接で性別違和を持つことを伝えました。面接担当の方々には驚かれましたが、無事に採用されました。
それからは新しい生活のスタート。長い間、親に言えなかった自分の性別違和について上京してからやっと伝えることができました。

04手話で会話ができるようになった

面接の時点で聴覚障害者の就労比率が高いと聞いていましたが、入社して驚いたのは、聴覚障害者の社員と聴者の社員が手話でスムーズに会話をしていることでした。配属された放送確認課には聴覚障害者の方が多く、手話でのコミュニケーションが重要なのです。私は難聴ですが、それまで手話を学ぶ機会がなかったので「手話を覚えられるんだろうか」と少し心配になりました。休日にも手話を勉強し、今では仕事に関してはしっかりと手話でコミュニケーションができるようになっています。日常会話についてもより深くコミュニケーションできるよう、さらに手話を覚えていきたいです。
職場で聴者の社員が話す言葉を聞き取れないとき、そのまま流さないで聞き返せる雰囲気があり、お互いの理解のすり合わせがしやすいことも助かっています。

  • インタビューの様子:笑顔の槇岡さん

05「こうしてほしい」と言える空気がある

社長自らが「ダイバシティの結実」を目標に掲げており、多様性を認め、いろいろな方がいる会社なので、自分の存在もごく普通に理解して受け入れてもらえました。
とはいえ、困ったこともあったのです。最初は女子トイレを使用していたのですが、トイレがフロアにある他の会社と共用なので、スーツを着た男性の姿で女子トイレに行くと他社の女性社員にぎょっとされたことも…。それに女子トイレを使用すること自体、女性という性を意識してしまい、とてもストレスになっていたのです。
そこで社長にも相談して男子トイレを使用できるよう配慮していただきました。以前の職場だったら言えなかったことも、ここでは躊躇することなく「こうしてほしい」と言える雰囲気があります。性別違和は会社としても初めてのケースですが、こちらの要望をきちんと受け止めて、どうすればいいのか考えて応えてくれる。一人ひとりの社員を尊重しているからこそだと思います。

06成長させてくれた“トレーナー制度”

会社にはトレーナー制度があり、新入社員は先輩であるトレーナーからマンツーマンでいろいろと指導してもらえます。仕事だけでなく、社会人としてのマナーや言葉遣いなども教わりました。
入社してから1年間、その日の仕事内容や気づいたことについてレポートを書くことが日課でした。自分の記入だけでなく、トレーナーや上司からのやり取りも含めて記録するものです。仕事について疑問点があればレポートに記し、それについてトレーナーから回答をもらえます。私の仕事内容や気づいたことについてその都度、丁寧に確認してくださり、よかったこと、もっと気をつけなくてはいけないことなどについて指摘してもらえるので励みになりました。課長もしばしばメッセージを書いてくださり、その言葉を真摯に受け止めて「もっと頑張ろう」と思えました。
入社後1年過ぎて、毎日記入していたレポートを「OJT報告書」として1冊の本にしていただきました。あらためて新人としての1年間を読み返すと、まわりの方々に「一人前に育てよう」との思いで指導していただき、経験を積み重ねて成長していることが自分でもわかって嬉しかったです。
メンター制度もあり、メンターの社員には業務以外でストレスや悩みがないかなど精神的な面で話を聞いてもらえます。しっかりと社員を育ててサポートする体制が整っているうえ、さまざまな面での配慮があるので、障害者も健常者も、誰もが働きやすい会社だと思います。

  • オペレーション業務の様子:横顔の槇岡さん
  • OJT報告書の写真

今度は私が、学んだことを生かして伝えていきたい

07会社に対し、社会に対し、自分ができること

仕事では親会社と連携をとりながら作業を進め、問題が発生したときには方法を話し合って解決したり、効率のよい方法に改善したりしています。上司や先輩が自分では思いつかない方法を提示してくださると「そんなやり方もあるんだ」と勉強になりますし、一人ではなくチームとして達成感を得られることがやりがいにつながっています。さらに経験を積み重ねるとともに、自分も後輩に教える立場になったとき、教えながら一緒に成長できたらと思います。
業務以外でも、この会社でいろいろな方と関わることで、自分自身が成長できたと思うことがあります。思い返せば、以前は自分のまわりの世界しか見えていませんでした。この会社でいろいろな障害のある方と出会い、世界が広がって見えるようになったのです。街を歩いていても白杖を使っている視覚障害者の方が目に留まるようになり、できるときにはお声がけするようになりました。
また、セクシュアル・マイノリティに属する当事者として、これからも社内で「こうしてほしい」と思うことについて声をあげていきたい。社会全体に対しても将来的にマイノリティとマジョリティといわれる人々の間の壁がなくなることが望ましいと思うので、多くの人とつながり、自分にできることを見つけて行動していきたいです。

  • カメラをみつめる槇岡さん

フォロワーとして社員を応援

國富隆志 経営管理本部 ダイバシティ推進課

私は精神保健福祉士の資格を持ち、メンタル面を中心にさまざまな面から、社員に対してより働きやすい環境づくりのための提案、調整をしています。また新入社員に対しては入社後3カ月目にフォローアップ面談を行っています。 槇岡くんのフォローアップ面談では、若くても自分をしっかり持っているという印象を受けました。性別違和については、繊細な事なので丁寧に聞き、彼が自分らしくいられるための相談先の情報を集めて提供しました。 お互いの共通の趣味が写真撮影なので、一緒に撮影に行って雑談しながらいろいろな話を聞いたこともあります。
業務だけでなく、さまざまな面で社員をサポートする体制がしっかり整っているところが働きやすさにつながっていると思います。

精神保健福祉士 國富隆志さんの顔写真